フィリピン中部の小さな島、シキホール島(Siquijor)。
透明な海と静かな森に囲まれたこの島が、最近、妙な注目を集めている。
理由は「山下財宝が見つかるかもしれない」という噂だ。

画像はWikipediaより
■ “魔法の島”と呼ばれる場所に、再び人が集まる
シキホール島は古くから“ヒロット”と呼ばれる伝統治療や呪術師で知られる島。
観光地としても人気だが、ここ数ヶ月、地元住民の間では**「見慣れない外国人が増えている」**という声が上がっている。
その多くは、対岸の都市**ドゥマゲテ(Dumaguete)**に滞在しているという。
港からフェリーで約1時間。
この町の海沿いには、世界各国の“トレジャーハンター”たちが集まり始めている。
■ SNS発信から広がった「金属反応動画」
きっかけは2024年の年末。
あるフィリピン人男性がTikTokに投稿した、わずか30秒の映像だった。
金属探知機を手に、シキホール島の崖の下を歩く姿。
キャプションには短くこう書かれていた。
“We found something under the rock.”
(岩の下に、何かを見つけた。)
投稿はすぐに削除されたが、画面の奥に映る特徴的な岩場から「場所はシキホール島の東海岸ではないか」と特定され、
フィリピン国内のトレジャーハンターたちが動き始めた。
■ 対岸ドゥマゲテに集う「宝探しチーム」
現地で取材を続けると、ドゥマゲテの安宿街で数人の外国人グループに出会った。
日中は市場で買い出しをし、夜になるとノートPCを広げて地図を見ている。
宿のオーナーに聞くと、
「彼らは“トレジャーハンター”だよ。中に日本人もいる。」
日本語での会話を耳にしたという地元スタッフもいる。
噂では、彼らはかつて山下財宝を研究していた歴史家グループの関係者で、
旧日本軍の記録や衛星画像をもとに、フィリピン各地を調査しているらしい。
■ 日本軍の“埋蔵金伝説”とシキホールの関係
山下財宝(Yamashita Treasure)とは、第二次世界大戦中に日本軍が東南アジア各地に隠したとされる金銀財宝のこと。
マニラ近郊やルソン島での発掘例は有名だが、
**「シキホール島にも埋蔵された」**という話は、これまで一部の歴史研究家しか語ってこなかった。
戦後間もない時期に、地元で「軍服を着た日本人が夜間に穴を掘っていた」という証言がいくつか残っており、
その情報を追う者たちが今も存在する。
■ 「日本人のグループが正式な調査申請を出した」と地元行政
ドゥマゲテ市の環境局関係者によると、
2025年初めに「日本人を含む調査団体」が文化・考古学目的の調査許可を申請していたという。
名目は「歴史的遺構の確認」だが、
申請書には“シキホール島南部地域における地下金属調査”という文言があった。
この調査が実際に財宝探しを目的としたものかは明らかでないが、
行政は「観光促進につながるなら歓迎」と前向きだという。
■ 島に伝わる“掘ってはいけない場所”
一方、シキホール島の住民の中には不安を口にする人もいる。
古くから伝わる言い伝えによれば、
「金を掘る者は、島の守り神の怒りに触れる」という。
ある高齢の女性はこう話す。
「昔、日本の兵士がここに穴を掘っていたよ。
次の日、彼らは姿を消した。
島は怒るんだよ。」
現在でも夜間の掘削は禁じられており、
地元警察が監視を強化しているという。
■ それでも止まらない“黄金の夢”
取材の最後、ドゥマゲテのカフェで偶然出会った若いトレジャーハンターに尋ねてみた。
「本当に、金があると思うの?」
「わからない。でも、金属探知機は嘘をつかない。
音が鳴る場所があるんだ。」
彼は笑いながらそう言って、
フェリー乗り場の方向を指さした。
海の向こう、シキホール島では今日も潮風が静かに吹いている。
その地下に、何かが眠っているのかもしれない。
