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K-POPの“兵役文化”とは?

画像はBBC.COMより


目次

― BTS以降のアイドルたちが直面するリアル ―

BTSのメンバーたちが順に兵役に入り、2025年には全員が復帰を迎えた。
このニュースを聞いて、「ようやくBTSが戻ってきた」と胸を高鳴らせるファンも多いだろう。
だが同時に、K-POPという産業全体にとって“兵役”という文化が持つ重みを改めて考えさせられる瞬間でもある。

韓国の男性には、満18歳から28歳までの間におよそ1年半〜2年の兵役義務が課されている。
芸能人もその例外ではなく、K-POPアイドルもまた、いずれはステージを離れ、軍服に身を包む日がやってくる。
これは一見、個人のキャリアに関わるだけの問題に見えるかもしれない。
しかし実際には、グループの活動スケジュールや事務所の経営、さらにはファンの感情にまで大きく影響する“産業的リスク”でもあるのだ。


兵役は「通過儀礼」でもあり「試練」でもある

韓国社会では、兵役は“男としての責任”を果たす重要な通過儀礼と考えられている。
そのため、芸能人だけ特別扱いされることはほとんどない。
むしろ「人気があるからこそ、きちんと行くべき」という世論が強い。

過去には、兵役逃れを試みた芸能人が世間から激しい批判を受け、
キャリアを失った例もある。それほどまでに兵役は社会的信用と結びついている。
つまり、アイドルにとっても兵役は“避けるもの”ではなく“乗り越えるもの”なのだ。


BTSが変えた「兵役の見られ方」

BTSのケースは、K-POP史における分岐点となった。
彼らは世界的な成功の真っ只中で兵役を迎えたが、
「国の義務を果たす」という選択を堂々と受け入れた。
その姿勢が国民からの尊敬を集め、結果的に“兵役を終えることがブランド価値を高める”という新しい認識を生んだ。

メンバーのジョングクやジミンが入隊直前まで音楽活動を続け、
ファンへのメッセージを残したことも印象的だった。
SNSには「待ってるよ」「誇りに思う」という応援コメントがあふれ、
兵役を「活動停止」ではなく「物語の一部」として受け止める流れが生まれたのだ。


兵役ブランクの“2年間”が生む影響

とはいえ、兵役によるブランクは確実に存在する。
2年という期間は、音楽トレンドががらりと変わるには十分な時間だ。
BTSが入隊した2022年から現在まで、K-POPシーンではNewJeans、RIIZE、ILLITなど
新しい世代のグループが世界市場を席巻している。

復帰後にどう存在感を取り戻すか——これはBTSだけでなく、
今後のすべてのK-POPアイドルが直面する課題だ。
しかし、兵役を経たことでより成熟したアーティストとして戻ってくるという期待も大きい。
たとえばSHINeeのミンホやEXOのスホのように、
除隊後に「人間的な深み」を見せてファン層を広げたケースもある。


BTS以降のK-POPが向かう先

BTSが示したのは、“兵役を恐れない”という姿勢だ。
彼らの成功以降、若いアイドルたちも兵役を前向きに語るようになった。
「一度リセットして、自分を見つめ直したい」という発言も増えている。
アイドルが軍隊に行くことは、いまやキャリアの“中断”ではなく“再出発”に近い。

HYBEをはじめとする大手事務所も、兵役中にソロコンテンツを継続配信したり、
帰還後のマーケティング戦略を綿密に計画するなど、
“兵役時代のアイドル運用”をシステム化し始めている。

BTSの再集結が予定される2026年は、K-POPの新しい時代の幕開けとも言えるだろう。
兵役という制度そのものが、アイドルたちの“成長物語”の一部として
受け入れられるようになった時、K-POPはさらに強くなる。

BTSの兵役は、単なる「活動の中断」ではなかった。
それは韓国社会の文化的価値観を世界に伝え、
アイドルという職業に“誠実さ”と“成熟”を与えた出来事だった。

K-POPの兵役文化は、これからも多くの議論を呼ぶだろう。
だが確かなのは、BTSがその常識を塗り替えたということだ。
彼らのように“待たせる勇気”を持つグループがいる限り、
K-POPの物語は、まだまだ終わらない。

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