どうしてK-POPは世界でこれほど人気なのに、J-POPはそこまで広がらなかったんだろう?
そう思ったこと、ありますよね。実はこれ、単に音楽の好みの問題ではなく、構造と戦略の違いが大きく関係しています。

画像: BIGHIT
K-POPは最初から「世界で売る」ために作られた
K-POPが他のアジア音楽と違うのは、最初から世界市場を狙っていたことです。
1990年代後半、韓国政府が「文化を輸出産業にする」と掲げ、エンタメ産業を国の成長戦略に位置づけました。
芸能事務所もその方針に沿い、「世界で通用する音楽」を作ることを目標にしてきました。
英語詞や国際的に通じるダンススタイル、グローバル感のあるビジュアル、海外ファンを意識したYouTube戦略。
BTSやBLACKPINKは、その結果として「世界共通の感覚」に訴える形で成功したわけです。
J-POPは国内で完成してしまった文化だった
一方のJ-POPは、90年代の黄金期に国内市場で大成功を収めました。
小室ファミリーや宇多田ヒカル、B’zなど、日本語の歌詞と繊細な情緒で多くの人の心をつかみました。
日本の音楽番組、雑誌、CDショップという国内メディアの中で完結した文化だったのです。
その成功があまりにも大きかったため、「海外に出る必要性」が薄れてしまいました。
結果的に、世界基準とは違う方向で成熟していったのがJ-POPの特徴です。
韓国は「外に出るしかなかった」
もうひとつの大きな要因は、国の規模です。
韓国は国土が小さく、人口も限られています。
つまり、国内市場だけでは大きな産業を支えにくい。
だからこそ、K-POPは早い段階から「海外で売るしかない」という発想が当たり前でした。
練習生のころから英語や中国語を学び、国際活動を想定して育成される。
これは、国内市場が大きい日本とはまったく逆の環境です。

画像: TV10 (티비텐)
コロナ禍でネットがK-POPを押し上げた
2020年以降のコロナ禍で、世界中の人が自宅で動画を見る時間が増えました。
そのとき、YouTubeやSNS上で爆発的に広まったのがK-POPです。
BTSがライブ配信でファンと直接つながり、BLACKPINKがミュージックビデオで圧倒的な世界観を見せつける。
その映像クオリティとビジュアルの強さが、SNSとの相性抜群でした。
「外に出られない時代に、ネットで国境を越えた」――これがK-POP躍進の決定打になりました。
SNSとファンダムの力
K-POPはファンの力をうまく使う文化でもあります。
ファンが翻訳したり、動画を拡散したり、ダンスをまねして投稿したり。
そうした「ファンダム活動」自体が宣伝になっているんです。
一方のJ-POPは、著作権や映像利用の制限が厳しく、ファンが自由にコンテンツを拡散しづらい環境でした。
その違いが、世界的な広がりに大きく影響しています。
これからのJ-POPはどう変わる?
とはいえ、J-POPが世界でチャンスを失ったわけではありません。
むしろ、ここ数年で新しい動きが見えてきています。
YOASOBIやAdo、藤井風のように、YouTubeやTikTokを軸に音楽を発信するアーティストが増えました。
日本語の美しさを残しながら、映像や物語、独特の世界観で海外リスナーを惹きつけています。
これから大事なのは、「日本らしさ」を失わずに、どう発信していくか。
海外向けの字幕、SNSでの対話、グローバルなビジュアル戦略。
日本の音楽は内容的には十分通用します。伝え方を変えれば、再び世界が振り向く日も遠くありません。
結論
K-POPが世界で成功したのは、国の小ささゆえに早くから海外市場を狙い、世界基準で進化してきたから。
そこにSNSとコロナ禍という時代の追い風が重なり、世界の共通語のように広まったのです。
一方、J-POPは日本国内で文化として完成し、海外展開の必要がなかったために世界の波に乗り遅れました。
でも、いまは時代が変わりました。発信の形をアップデートできれば、J-POPにも再びチャンスがあります。
世界がK-POPを見つけたように、次はJ-POPが世界に再発見される番です。
