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IVE韓国人メンバーは「なぜ」あれほど日本語が流暢なのか? IZ*ONEの遺産と徹底したプロ意識を解明

2021年の彗星のようなデビュー以来、K-POPシーンの頂点に君臨し、日本でも絶大な人気を誇るIVE。

彼女たちのパフォーマンス、ビジュアル、そして楽曲のクオリティが、幅広い層に支持されていることは周知の事実です。

しかし、卓越しているのはそれだけではなく、彼女たちの「言語能力」もよく話題になります。

日本の音楽番組やインタビューを観て、多くの視聴者が衝撃を受けます。「なぜ、IVEの韓国人メンバーは、あれほど自然な日本語を操れるのか?」と。

特にリーダーのユジン、そしてウォニョンの2名に至っては、もはや「流暢」というレベルを超え、日本人と遜色ない速度とニュアンスで会話を成立させています。これは単なる「K-POPアイドルの営業用日本語」とは明らかに一線を画します。

この現象は、偶然の産物ではありません。そこには日韓合同プロジェクトが生んだ「圧倒的な経験値」と、グローバル市場を見据えた「徹底したプロ意識」という、2つの明確な理由が存在していました。

ここではIVEの言語能力の謎を徹底的に解明してみたいと思います。

© 10Asia

目次

最大の理由。ユジンとウォニョンが持つ「IZ*ONEの遺産」


IVEの日本語レベルを語る上で、絶対に避けて通れないのが、メンバーのアン・ユジン(リーダー)とウォニョンが所属していた日韓合同グループ「IZ*ONE(アイズワン)」の存在です。

IZ*ONEは2018年、韓国のオーディション番組『PRODUCE 48』を通じて結成されました。この番組自体が「日韓合同」であり、AKB48グループのメンバーと韓国の練習生が競い合うという前代未聞の企画でした。

この時点で、ユジンとウォニョンは、まだ10代半ばにして「日本文化」と「日本人とのコミュニケーション」という特殊な環境に身を置くことになりました。

日本語学習の「最適解」――日本人メンバーとの共同生活


オーディションを勝ち抜き、IZ*ONEとしてデビューしたユジンとウォニョン。グループには、宮脇咲良(現 LE SSERAFIM)、矢吹奈子、本田仁美(現SAY MY NAME)という3名の日本人メンバーが在籍していました。

IZ*ONEが活動した約2年半、彼女たちは宿舎(寮)で文字通り「共同生活」を送りました。

これが、彼女たちの日本語能力を爆発的に向上させた最大の要因です。

我々が第二言語を習得する際、最も効率的だが最も困難なのが「その言語に24時間浸かること」です。一般的な語学留学でさえ、学校が終われば自国語を話す友人と過ごすことも多いです。

しかし、ユジンとウォニョンは違いました。仕事場でも、そして家に帰った宿舎でも、日本人メンバーという「生きた教科書」が常に側にいました。

座学ではない、実践の場。「今日の夕飯どうする?」「お風呂入っていい?」といった日常会話から、番組の反省、将来の夢まで、あらゆるコミュニケーションが日本語と韓国語のミックスで行われました。

ニュアンスの習得。教科書では学べない「マジで?」「ウケる」「ていうか」といった若者言葉や、微妙な言い回しの違いを、生活の中で吸収していきました。

これは、週に数回の日本語レッスンとは比較にならない、濃密な「強制インプット環境」です。ビジネスマンが海外赴任で言語を急速に習得するプロセスと本質は同じです。

「仕事」としての日本語――日本市場での過酷なプロモーション


IZ*ONEは、韓国と同様、あるいはそれ以上に日本市場を重視していました。日本でのCDリリース、全国ツアー、音楽番組(Mステ、FNS歌謡祭など)への出演、日本のバラエティ番組へのゲスト出演、雑誌の表紙といった活動が続きました。

彼女たちにとって、日本語は「趣味」や「教養」ではなく、「仕事の道具」でした。

台本を超えた対応力。日本のバラエティ番組では、MC(ダウンタウン、今田耕司など)からのアドリブや鋭いツッコミが飛んできます。単に暗記した定型文では対応できません。「ウケる」回答を瞬時に日本語で組み立てる能力が求められました。

プロ意識の賜物。この「失敗が許されない」プロの現場を2年半にわたって経験したことで、彼女たちの日本語は「通じるレベル」から「仕事で結果を出せるレベル」へと鍛え上げられました。

結論として、IVEのユジンとウォニョンは、デビュー時点で「日本語上級者」という圧倒的なアドバンテージを持っていました。これが、IVEというグループ全体の日本語レベルの「基準値」を異常なまでに引き上げているのです。

Source: TMA X account

エリートの矜持。ガウルとリズの「高速キャッチアップ」


では、IZ*ONEを経験していない他の韓国人メンバー、ガウルとリズの2人はどうでしょうか。

彼女たちもまた、来日時のインタビューやファンとの交流(ヨントン)において、驚くべき速度で日本語を上達させています。特にガウルは、年長メンバーとして、ユジンやウォニョンに頼らないしっかりとした日本語の挨拶やコメントを披露する場面が多いです。

この背景にあるのは、IVEが所属するSTARSHIPエンターテインメントの「徹底した教育戦略」と、メンバー本人の「プロ意識」です。

「IVEスタンダード」という名のプレッシャー


まず想像に難くないのは、グループ内にユジンとウォニョンという「日本語ネイティブ級」のメンバーがいることのプレッシャーとモチベーションです。

日本のプロモーション中、通訳を介さずとも日本人スタッフと談笑し、番組を盛り上げるユジンとウォニョンを目の当たりにして、「自分も話さなければ」と感じるのはプロとして当然の意識です。

これが「IVEスタンダード」です。彼女たちは単なるK-POPアイドルではなく、「グローバルスタンダード」のグループとしてデビューしています。日本市場で本気で成功するためには、言語の壁はない方がよいに決まっています。

日本市場の戦略的重要性


そして、日本はアメリカに次ぐ世界第2位の音楽市場です。特にK-POPにとっては、収益の柱となる最重要マーケットです。

事務所(STARSHIP)が、ガウルとリズに最高レベルの日本語教育を施していることは間違いありません。日本での正式デビュー(2022年)も果たし、ドーム公演も成功させるなど、日本での活動は本格化しています。

彼女たちの日本語上達は、単なる個人の努力だけでなく、事務所の「日本市場戦略」に基づいた集中的な投資(教育)の結果でもあります。

Source: IVE X STUDIO CHOOM

相乗効果の鍵。日本人メンバー「レイ」の存在


そして、この言語習得環境を完璧なものにしている最後のピースが、日本人メンバー・レイの存在です。

レイは、通訳や教師役として機能するだけでなく、グループ内の「空気」を作る上で決定的な役割を果たしています。レイは、ウォニョンとはソウル公演芸術高校の1つ先輩で、親しかったこともあって、それも大きいものと思います。

心理的ハードルの低下。グループに日本人が1人いることで、韓国人メンバーが「間違ったら恥ずかしい」という心理的ハードルなしに、覚えたての日本語を試すことができます。レイが日常的に発する日本語が、自然なインプットにもなります。

ニュアンスの「最後の砦」。ユジンやウォニョンでさえ難しい、微妙な敬語の使い方や、日本独特の「空気を読んだ」表現について、レイは「ネイティブの同世代」として完璧な見本となっています。

最強の学習シナジー。レイ(ネイティブ)が自然な日本語環境を作り、ユジン&ウォニョン(上級者)が、レイと高度な会話を成立させ、ガウル&リズ(学習者)が、そのハイレベルな会話を日常的に聞き、自らも実践に参加する。

この「ネイティブ+上級者+学習者」という構成は、言語学習において考えうる「最強の布陣」です。


IVEの韓国人メンバーがなぜあれほど日本語が流暢なのか。私どもの結論として、以下の3つの要因が奇跡的に重なり合った「戦略的必然」です。

「IZ*ONEの遺産」: ユジンとウォニョンが日韓合同プロジェクトで培った「2年半の実践経験」という圧倒的な基盤。
「徹底したプロ意識」: ガウルとリズが、日本市場の重要性を理解し、「IVEスタンダード」のプロ意識で集中的に学習を続けている努力。
「日本人メンバーの相乗効果」: レイの存在が、グループ内の日本語学習環境を完璧なものにしていること。

彼女たちの流暢な日本語は、才能やセンスという曖昧なものではなく、過酷なオーディションを勝ち抜き、プロの現場で戦い抜いてきた「経験」と「努力」の結晶です。

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