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HYBE、LAFCと提携で米市場に新展開。音楽とスポーツのファンを繋ぐ

K-POPの枠を超え、グローバルなエンターテインメント・ライフスタイルプラットフォーム企業へと変貌を遂げるHYBEが、次なる一手としてアメリカのプロスポーツ界と歴史的なタッグを組むことを発表しました。相手は、アメリカ・メジャーリーグサッカー(MLS)に所属する「ロサンゼルス・フットボール・クラブ(LAFC)」。ソン・フンミン選手が所属するこの人気クラブとのパートナーシップは、HYBEにとって初の米国プロスポーツチームとの公式提携となります。

Source: IG @hm_son7

この動きは、単なるアーティストのプロモーションや、一度きりのイベント協賛とは根本的に異なります。両者は今月29日(現地時間)、ロサンゼルスのBMOスタジアムで開催される「Audi 2025 MLS Cup Playoffs」初戦において、Kカルチャーをテーマにした大規模な共同イベントを開催予定です。これは、K-POPを中心とする韓国文化と、アメリカの熱狂的なスポーツ文化が本格的に融合する、極めて戦略的な試みの第一歩です。

なぜ今、HYBEはスポーツだったのか。そして、この提携が未来に何をもたらすのか。その深層にある戦略と、エンターテインメントの未来像を紐解きます。

目次

「試合」から「没入型フェスティバル」へ BMOスタジアムで何が起こるのか

今回のパートナーシップの幕開けとなる29日のイベントは、従来のスポーツ観戦の常識を覆すものとなりそうです。LAFCの試合は、単なる「サッカーの試合」から「Kカルチャーの没入型フェスティバル」へとその姿を変えます。

BMOスタジアムでは、試合中を通じてHYBE MUSIC GROUP所属アーティストたちの楽曲がBGMとして流れ、スタジアムの雰囲気全体をK-POPの世界観で包み込みます。さらに、単に音楽を流すだけでなく、K-POPのコンサート演出の真骨頂とも言えるライトショー、花火、そしてレーザー演出が、試合の展開や音楽と連動して繰り広げられる予定です。

特筆すべきは、観客全員に配布されるという「リストバンド型ライト」です。これは、K-POPのコンサートにおいて、ファンとアーティスト、そして会場全体の一体感を生み出すために不可欠なアイテム。このライトが音楽やスタジアムの演出とリアルタイムで連動し、数万人の観客が光を通じて一つになる体験を創出します。スポーツの応援が持つ「共同体」としての熱狂と、K-POPのファンダムが共有する「連帯」としての熱狂。この二つの異なるベクトルのエネルギーがBMOスタジアムで融合する瞬間は、まさに今回の提携を象徴するものとなるでしょう。

さらに、この「没入体験」は聴覚や視覚だけにとどまりません。スタジアム内では、韓国料理をベースにした特製フュージョンメニューが提供され、現地の人気韓国料理店も参加します。これは、五感すべてを通じてKカルチャーに触れてもらうという、HYBEの徹底した世界観構築の一環です。LAFCのファンが、BTSの楽曲を聴きながらフュージョン・キムチ・フライを楽しみ、チームの勝利に熱狂する。その時、Kカルチャーは「異国の文化」ではなく、「ロサンゼルスの日常を彩るエンターテインメント」として、ごく自然に受け入れられるのです。

Source: HYBE

なぜLAFCだったのか? Kカルチャーとスポーツが「ファンダム」で繋ぐ必然

今回の提携において、HYBEがロサンゼルスを、そしてLAFCを選んだことには、極めて明確な戦略的理由があります。

HYBEのバン・シヒョク議長が「音楽とスポーツは言語や国境を超え、人々をつなぐ力がある」と語るように、両者は「ファンダム(Fandom)」という強力なコミュニティを基盤にしている点で共通しています。世界で最も強固なファンダムを構築・運営してきたHYBEにとって、同じく熱狂的なコミュニティを持つスポーツチームは、互いのノウハウを共有し、ファンベースを拡大し合える最高のパートナーです。

その中でもロサンゼルスは、アメリカの中でも韓国系住民が最も多く、アジア文化への理解が深い、HYBEにとって最重要の戦略的拠点です。エンターテインメントの世界的中心地であるLAで成功モデルを築くことは、全米、ひいてはグローバル市場全体への波及効果を意味します。

はい、承知いたしました。ご指摘の箇所を、文章量を維持しつつ、表現を変えて書き直します。


LAFC側が掲げる「多様な文化を受け入れるチーム運営」という姿勢は、グローバル市場でファンコミュニティを拡大してきたHYBEの理念と深く共鳴するものでした。LAFCのラリー・フリードマン共同代表が、今回の協業を「ロサンゼルスの多様性と包容性を象徴するものだ」と語ったことからも、これが単なる商業的な結びつきに留まらず、両者が共有するビジョンに基づいたパートナーシップであることが伺えます。

こうしたHYBEの動きについて、米国の主要メディアも以前から注目していました。例えば、フォーブス誌やブルームバーグなどは、イサカ・ホールディングスの買収といった大型案件を分析する際、HYBEの戦略を「単に音楽を売るのではなく、K-POP独自のビジネスモデルや強固なファンとの関係性といった『仕組み全体』を現地に持ち込もうとしている」と評してきました。これは、コンテンツの輸出を超えた「文化的なエコシステムの移植」とも呼べるアプローチです。

その文脈で言えば、今回のLAFCとの提携は、その戦略をさらに推し進める具体的な一手と見ることができます。これまでの主戦場であった音楽の枠組みから一歩踏み出し、アメリカの国民的な日常であるスポーツの領域へ、HYBEが培ってきたノウハウやコミュニティ運営の手法を本格的に接続させようとする、非常に意欲的な試みと言えるでしょう。

Source: IG

プロモーションを超えた野望 HYBEが描く「文化経済圏」の全貌

過去にも、BTSのテテがロサンゼルス・ドジャースの始球式に登場するなど、スポーツシーンとの接点は存在しました。しかし、今回のLAFCとの提携は、そうした単発のプロモーションとは次元が異なります。これは、持続的かつ多角的な「パートナーシップ」です。

HYBE AMERICAのアイザック・リー会長が「アメリカという主要成長市場においてHYBEの文化的影響力を拡大する契機になる」と述べるように、その狙いは「ファンダムの可能性をさらに広げる」ことにあります。これは、HYBEがWeverseを軸に構築しようとしている独自の「文化経済圏」の拡大に他なりません。

この提携により、HYBEはLAFCが持つ数百万人の強力なファンベースに対し、K-POPアーティストの魅力を直接的かつ継続的にアピールする巨大な「接点」を獲得します。逆にLAFCは、HYBEが抱えるグローバルなK-POPファンダムに対し、チームの魅力を発信する新たなルートを手に入れます。

今後は、アーティストとスポーツイベントのさらなるコラボレーション、両者のロゴやIP(知的財産)を活用した共同マーチャンダイジング、あるいはHYBEのプラットフォーム「Weverse」上でのLAFC関連コンテンツの配信など、様々な展開が予想されます。

HYBEにとって音楽は、もはや単なる「聴くコンテンツ」ではなく、世界中の人々を繋ぎ、ライフスタイル全体を豊かにする「共通言語」としての役割を担っています。その共通言語が今、スポーツというもう一つの強力な共通言語と結びつきました。

この提携は、HYBEが単なるエンターテインメント企業から、人々の日常や情熱が交錯する「文化的プラットフォーム」そのものへと進化していく上での、極めて象徴的な一歩と言えるでしょう。異なる二つの文化がスタジアムで生み出す新しい「共鳴」が、ロサンゼルスの地でどのように根付き、世界に広がっていくのか。その進化から目が離せません。

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